大多喜


2012年11月3日

房総半島のほぼ中央に大多喜という城下町があります。
江戸初期から戦前までは大変な隆盛を誇っていたそうですが
徐々に落ち着いた町になったと聞きます。
現在は観光も町の産業として重視しているのだそうです。
町は夷隅川中流にあります。
鉄道ファンの間では有名ないすみ鉄道で大多喜駅に行けます。

今回は土曜日の祝日を利用して朝早めに家を出て一日を大多喜観光に費やすことにします。
東京駅朝9時の特急わかしお3号に乗って大原駅を目指します。
わかしお3号は非常に快適な列車でして
静かで揺れが少なくてまるで新幹線に乗っているかのようでした。
検札の車掌さんや車内販売の人が回ってきたりして
まるで遠くの旅行するみたいで盛り上がっちゃいます。
70分ほどで乗換駅の大原に到着します。

大原駅のあるいすみ市は房総半島の東海岸中程の中堅都市です。
以前は大原町でしたが平成17年合併でいすみ市になりました。
駅名だけ残るって良くありますよね。
JR大原駅に着いた僕たちはそのまま同じ駅舎にある
いすみ鉄道大原駅に入ります。


いすみ鉄道大原駅。JR大原駅に合体した建物になっています。
駅前の自動販売機がいすみ鉄道の車両の彩色になっているのが可愛いです。

駅の中では駅改札手前がいすみ鉄道グッズの売店になっていまして
大手の鉄道会社が良くやっているエキナカの売店の極小版とも言えますね。
思わずここで小さなムーミンのストラップと
キハ28の絵が描いてあるいすみ鉄道車両コースターを購入してしまいました。

よく見ているとその売店でレジを売っている女性たちが
そのまま乗車切符を販売しているようなんですね。
大原から大多喜駅は片道520円ですが
ちょうど開催している「みんなでしあわせになるまつりin夷隅」の
記念一日フリー乗車券を購入すると1000円です。
これを買わない手はありません。
電車に乗ってみるとわかりますがいすみ鉄道は乗車する際に整理券を取って
降車時に精算するワンマンバス方式なのでした。
フリー乗車券の人は乗車券を運転士さんに見せるだけです。




これから乗るいすみ鉄道の列車、一両編成だったけど列車って言うんでしょうか。いすみ201型。
列車の中は長いす形式でした。

これから30分ほどかけて大多喜を目指します。
いすみ201型の車体にはいくつものムーミンのキャラクターの絵が描いてあって
この列車がムーミン列車であることをアピールしています。
車内の窓や壁にはムーミンの登場人物(?)のシールなどが貼ってあってさらに盛り上げています。
いすみ鉄道とムーミンの関係は不明ですが車体が楽しくなっているのは事実です。
ムーミンとともに30分走るといくつかの小さな駅を通り過ぎて大多喜駅に着きます。
途中の国吉という比較的大きな駅では駅に集まっていた大勢の人が
列車の乗客に手を振って歓迎していました。
何か大きな催し物があるようでした。

いすみ鉄道大多喜駅。
ネーミングライツの関係でデンタルサポート大多喜駅という名前なのだそうです。

時計台がいい雰囲気を出してます。
写真では人がいないように見えますが大勢の観光客が捌けたあとの写真です。
実際は結構混んでいました。
駅前にはタクシーが沢山たまっていました。

駅の向かい側には大多喜町観光本陣という観光案内所がありまして
無料の地図などがおいてあります。
手持ちのガイドブックのほかに地元の地図があると大いに助かります。
これをいただいて町中を歩くことにします。
ところで大多喜町観光本陣の中には
「おたっきー」というゆるキャラと思われる人形が一体ありました。

戦国武将キャラ、おたっきー。大多喜ですからね。

どうやらおたっきーは徳川家康の家臣本多忠勝を模したものと思われます。
家康が江戸城に入ったときに大多喜城には
重臣の本多忠勝に守らせた歴史があるからですね。
中に人を入れる予定はないようで人が入るには小振りな人形なのでした。

本陣を出て坂を下ると房総中央鉄道館という面白そうな建物があったのでこれに入場してみると
新しいともいえないし片付いているとも言えない館内には
所狭しと鉄道模型のジオラマと線路が広がっていて沢山の鉄道模型が走っているのです。
ご存じのように鉄道模型は無事に走らせるのが至難の模型です。
たいがいあちこちの線路上で立ち往生したり脱線したりして専従の管理者が必要なものです。
それでも鉄道模型は見ていて飽きないものですね。
館内の奥に進むと様々なサイズの鉄道模型や
実際に故障車両を修理しているスタッフがいたりして
鉄道ファンにはたまらない空間が作られています。

最近やっと口がきけるようになったと思しき男の子が
ブルートレインを指さして回らない口で「ブウートエイン、ブウートエイン」と言っていました。
男の子を連れてきたお父さんもとても楽しそうです。
あの子はきっと鉄道オタクになるのでしょう。
帰りにいすみ鉄道のマグネットを二つ買いました。

そろそろお腹が空いてきたのでガイドブックおすすめの店でお蕎麦をいただくことにします。
いろいろなメニュー有りましたけどここは定番の特上天ざるで、
家人は鴨南蛮そば、どちらも大変美味しかったです。

我々がお昼を食べたおそば屋さんの「くらや」さん。天ぷらそば美味しかったです。

お腹がくちくなって幸せな僕たちはさらに大多喜の町を学びます。
すぐ近くに商い資料館という往時の商家の様子を偲ばせる品を展示した建物を見ました。
館内には地元の人のボランティアと思われる案内係の老婦人がいらして
昔の町の賑わいなどについて教えてくれました。

資料館を辞してそのあとは大多喜城を見に行くことにしました。
線路を渡ってなだらかな上り坂をゆっくり進みます。
まだお昼を食べたばかりなのにもう少し疲れてきました。
坂の途中に妙なモニュメントがありました。
メキシコの国旗をあしらった金色の球体を支える三角錐にはメキシコ通りの文字があります。

忽然とあらわれた謎のメキシコ通り。

江戸初期に本多家がメキシコ船の遭難を救助したことが縁で
昭和53年メキシコ大統領の大多喜町公式訪問があったのだそうです。
これを記念して大多喜城に登る道をメキシコ通りと名付けられました。
それにしても400年前のことを覚えていて感謝してくれるなんてありがたいことですね。

このモニュメントからすぐのところにメキシコ通り最高の眺望を誇る絶景ポイントがあります。

御禁止川(おとめがわ)の美しい風景。

このあたりは夷隅川の渓谷が大変美しい場所でして
そのうえおいしい鯉や鮎がいるのだそうです。
それらは将軍家に献上するものなので捕ることを禁止されました。
それで夷隅川のこのあたりを御禁止川(おとめがわ)と呼ぶのだそうです。
それにしても美しい風景でした。

大多喜城。千葉県立中央博物館大多喜城分館として天守閣型に建てられたもの。

息を切らしてさらに坂を登ると突然目の前に白亜の天守閣が見えてきます。
大多喜城は昔は山城だったと聞きますから天守を持たなかったんじゃないかと思いますが
(諸説あるらしいです)
この立派な天守閣を見るとお城に来た感じがします。
その千葉県立中央博物館大多喜城分館では企画展として
「上総の仏教美術 夷隅・長生」という美術展をやっていました。
眼福、眼福。
ちなみに文化の日、と言うことで嬉しいことに入場料は無料でした。
来年も文化の日に来ようかな。

城下に下って夷隅神社を見て帰ろうと考えて歩いていたら町役場にさしかかりました。
役場も休日と見えて人気がありません。

大多喜町役場。江戸時代風の門構えが楽しい。

町役場が率先して観光産業育成の姿勢です。
大多喜町は文化の薫り高い城下町です。
是非広く関東全域に知らしめていただきたいと思います。

町役場を過ぎて少し歩くと夷隅神社に到着します。

夷隅神社参道。縁結びの神様なのだそうです。
神社の境内では5と10のつく日に賑々しく朝市が開かれるそうです。

今回は5のつく日でも10のつく日でもなかったので人はいませんでした。

城下町特有の曲がりくねった道路が走っています。

ここまで歩いて僕たちはすっかり疲れてしまいました。
もう帰る時間なのですね。
これから大原に出てそのあと東京駅まで電車に乗って
さらに地下鉄で帰るのですからもう帰らなくちゃ、です。
駅に向かう途中で山の上に立つ大多喜城に勇姿を見ました。

城下から見える大多喜城天守。やっぱり城は天守閣ですね。

いすみ鉄道でのんびり大原駅まで乗って
30分近く待って特急わかしおに乗ります。
電車がどのホームから出るのかがわからなくて
一番ホームと二番ホームを階段で行ったり来たりしました。
どこかにわかりやすく書いておいて欲しいです。
JRさん、不親切です。

わかしおの車内は相変わらず快適で
東京駅まではずっとうとうとしていました。
電車の座席って本当に気持ちよくて眠くなりますね。
一つ自室に欲しいです。

一度は行ってみたかった大多喜でしたので今回も充実したお休みとなったのでありました。


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