お伊勢参り


2012年7月15日


伊勢神宮は二十年に一回の頻度で式年遷宮と言われるお引っ越しをします。
お引っ越しと言っても遠くに引っ越すわけではありません。
敷地の中ですぐ隣に新しい社殿を建てて神様にお移りいただくという儀式であります。
宮大工の技術を伝承するのが目的だと聞いたことがあります。よくわかりません。
来年はその式年遷宮の年なのだそうです。
20年に一度の大行事です。
来年はきっと伊勢神宮、混雑しますね。
それで今年の夏はお伊勢参りをすることにしました。

連休を利用して一泊旅行はお正月の名古屋以来です。
いつ乗っても新幹線に乗るときはその非日常にうきうきします。
新幹線に乗る仕事の人には感じることの出来ない感覚ですね。
東京駅で朝食代わりの駅弁を買って指定席におさまると旅行気分が盛り上がります。
走り始めたらすぐに食べ始めて品川に着く頃にはあらかた食べ終わっていました。
どうやら小生には駅弁をゆっくり楽しむという機能はないようです。
車内販売のお姉さんからビールを求めて午前中からビールという旅の至福を楽しみます。
新幹線に乗るとついビール飲んじゃいます。

気持ちよくなってうとうとしていたら非情な新幹線は名古屋に着いてしまいました。
もっと寝ていたかったのにい。
ここから、みえ号と言う列車に乗り換えて伊勢に向かいます。
半年ぶりの名古屋を楽しむ暇もなくみえ号に乗り込みました。
名古屋から伊勢市までは1時間35分かかりますので東京から名古屋までとほぼ同じです。
今更ながら新幹線の速さに驚きます。
とはいえ在来線のみえ号も結構速くて
車窓の風景は飛ぶように過ぎていきます。
1時間半の列車の旅を堪能いたしました。


みえ号の勇姿。実際速いです。

みえ号の車内は大変快適でした。
一組の団体さんと一組の家族連れが同乗していてなかなか賑やかでした。
他にも大勢のお客さんが乗っていましたが
伊勢駅に着いたらほとんどの人が降りちゃいました。
伊勢市駅はJRと近鉄線が一緒になった不思議な駅でした。

僕たちが予約してあった伊勢パールピアホテルは近鉄側にあったので
近鉄側の改札で駅の外に出ました。
ホテルまでは徒歩3分、近くて助かります。

まだ時間が早いのでチェックインは出来なくてホテルのフロントに荷物を預かってもらいます。
宿泊客の荷物は早い時間から預かってくれるので助かります。
ロビーに隣接したパン屋さんでサンドウィッチを求めて
ロビーの一角に用意されたテーブルで軽い昼食をすませます。
今日のうちに外宮と内宮を回るつもりですので気持ちが引き締まります。

まず徒歩でJR側の伊勢市駅に回り込みます。
近代的な駅舎があって駅前には「ようこそお伊勢さんへ」と言う看板も立っています。

お伊勢さんは今も重要な観光資源ですね。

駅舎内に併設されている観光案内所で伊勢市内マップをいただきます。
これさえあれば伊勢市駅と外宮(げくう)と内宮(ないくう)の位置関係もばっちり理解出来ます。
ガイドマップによるとさきに外宮をお参りするのが一般的なのだそうで
我々もその順にお参りすることにします。

駅前から外宮に向かいます。
外宮までは公称徒歩五分ですからすぐですね。
それにしてもお伊勢様のビックネームの割に
駅前通りでかつ外宮への参道でもあるこの道路の人気のなさに驚きます。


外宮に向かう参道

外宮に近づくとだんだん人通りが増えてきました。
地方の町においては自動車が移動手段の中心ですので
駅周辺は意外に繁華じゃなかったりするんですね。
そういうわけで外宮境内に入る頃にはかなりの人混みになりました。

外宮正宮前

外宮参拝をしてすっかり清らかになった僕たちは
その清い心が世の中にけがされないうちに内宮の参拝をする予定です。
外宮から内宮までは4キロほど有るのでちょっと歩く気はしません。
この日の伊勢はかなり暑くて水分補給しながらの参拝ですので
乗り物は必須です。
外宮前のバス停から内宮行きのバスに乗って一路内宮を目指します。
バスは大混雑でおまけに内宮近くにさしかかってからは道路が大渋滞を起こしていまして
内宮到着には相当の時間を要しました。
ここまででもうくたくたです。

気を取り直して内宮に向かいます。
内宮の最初の鳥居のところで丁寧なお辞儀をしている参拝者を多数お見かけしました。
素晴らしくご丁寧なことです。

内宮鳥居、ここからもう神々しいし。

この鳥居をくぐると大きな木製の橋がありまして明らかに神域に入ったように空気が変わります。
外宮に参拝して身も心も清められて小生は生まれ変わりました。
内宮の神域の清らかな空気がわかるようになった感じです。
内宮の空気を吸うと日本人の始まりの象徴がここにある感じです。

それはそうとこの日は大変暑くて是非帽子が必要な気候です。
鞄から愛用のシャッポを出そうとして気づきました。
あの大混雑のバスの中に置き忘れてきてしまったようなのです。
運良く空いてる席があったので家人は立たせたまま
小生だけ座席でうたた寝をしていた罰が当たったのでしょうか。
天網恢々疎にして漏らさず、さすがお伊勢様です。
帽子は十年ほど以前、長崎のハウステンボスで購入して以来
ずっと愛用していたものでしたので大変残念なのでした。
なによりその日暑さを凌ぐアイテムを失って困ったのでした。

広々として神々しい内宮境内。お伊勢様の迫力に圧倒されます。

幸い神宮の内宮は深い木森に覆われて少し進めば木陰伝いに歩くことが出来ます。
参拝者に優しい内宮に感謝です。


内宮深くに進んで正宮前階段に至る。まるで初詣のような人出に驚きました。

正宮と書かれた表示と大勢の参拝客の動きに従って奥に進むと
内宮の正宮に到達しました。
正宮前には幅の広い階段がありましたが
写真のように階段の上に至るまで大混雑で数分待って一段進むという具合です。
連休ですからいつもよりは混雑しているものと思われますが
これでは初詣の時はどんな具合になってしまうのか心配なくらいです。
きっと凄く凄いのでしょうね。
やっと階段の上まで行くと鳥居をくぐって中に入ります。
そこの部分は狭くなっていて中にはいるとまた広がって参拝できます。
ボトルネックになっているのですね。
参拝を終えると階段脇の女坂のような坂に誘導されてもと来た道に戻ります。
境内の休憩所に立ち寄ってみたら熱中症の人を助けに来た救急車が止まっていました。
この暑さです、宜成るかな。

内宮を辞して門前町と思しきおはらい町と呼ばれる商店街を歩きました。
参拝を終えたひとでおはらい町はいっぱいでした。
有名な赤福をはじめ沢山の土産物屋が軒を連ねています。
それになにより大変な人出です。
外国人も沢山お見かけしました。
外国の人もお伊勢参りをするのですね。


内宮参拝のあとは善男善女の楽しみを引き受けてくれる「おはらい町」を歩きます。

あちこちでソフトクリームや氷を売っているようです。
小生も食べたくなって一つ求めようと思ったら
今回のツアーでソフトクリームをサービスしてくれる特典がついているのを思い出しました。
クーポンを決められたお店に持って行くとソフトクリームをサービスしてくれると言うわけです。
僕たちはそれで美味しい抹茶ソフトクリームをいただいたのでした。
暑い日でしたので嬉しかったです。
さらにおはらい町をのんびり歩いてゆくと
おかげ横丁と言う路地を見つけました。
試しに入っていくと一転してディープな雰囲気の路地になっていて
「何これ!面白い!」とはまってしまいました。
あとで聞いたらこのおかげ横丁は「赤福」さんがつくった無料のテーマパークなのだそうです。
「おかげ座」だけは有料です。
道理で自然発生的に出来たにしては不思議な感じでした。
でも良く出来ています。

不思議な怪しい雰囲気のおかげ横丁。おかげ横丁は赤福さんの作品です。

おかげ横丁に迷い込んで不思議な世界にトリップしたあと
おはらい町に戻って来た頃には僕たちはすっかり疲れていました。
そこで浦田町というバス停から伊勢市駅に戻ってホテルに帰ることにしました。

帰り道のバスはそれほど混んでなくてバスの座席から見える風景と
手元の市内マップを照らし合わせながら進みます。内宮はやっぱり駅から遠いですね。
途中で近鉄宇治山田駅という威風堂々とした駅を見ました。
隣の
堂々としたたたずまいの近鉄宇治山田駅。改装工事中。
隣の近鉄伊勢市駅よりもだいぶん立派です。


その近鉄伊勢市駅。

ホテルについてチェックインをしたらすっかり疲れてしまいました。
少しうたた寝をしてホテルのレストランの中の和食屋さんに行くことにしました。
そうしたらこれが大正解でしてお店の雰囲気は良いし
仲居さんは親切だし料理は美味しいしまた来たくなる素晴らしさでした。
あんまり嬉しいのでお酒なんか飲んじゃいました。
どうせ飲むくせに。

ところでこのホテルはビジネスホテルに良くある西洋式バスタブタイプのお風呂じゃなくて
自宅の風呂にはいるような風呂桶タイプのお風呂でした。
脱衣と洗顔のスペースも用意されているし
洋式のトイレも別の扉になっていますし
非常に使い心地の良いホテルでした。
良くある一つの部屋にバスとトイレと洗面を押し込めてあるタイプの部屋は嫌いです。

ホテルの部屋に戻ってからも追加のビールをしこたま飲んで泥酔して熟睡、
というのはお約束のパターンであります。

朝食はホテルのバイキングでした。
いつもながら和食を食べようか洋食を食べようか目移りしているうちに
ベーコンと納豆、みたいなへんてこな朝食になってしまいました。
美味しかったからいいんですけどね。
朝食を食べたら荷物をまとめてチェックアウトです。
駅のコインロッカーに荷物を預けて身軽になります。

これから前日に疲労で十分に見られなかった
おはらい町を再訪しようという計画です。
まずは伊勢市駅から徒歩で近鉄宇治山田駅に向かいます。
ここのバス停からおはらい町に行く計画です。
宇治山田駅前には明倫商店街という商店街があって
その看板に澤村栄治生誕の地と書いてありました。
それって凄いことじゃないですか!
伝説の名投手はこの地の生まれだったんですね。

バスは前日とは逆方向に走って浦田町に至ります。
ここからおはらい町を散策するわけです。
途中からおかげ横丁に迷い込みます。

おかげ横丁再び

おかげ横丁の中心はどうやらおかげ座のようですのでおかげ座を見学して行くことにします。
おかげ座は写真の奥に映っている建物です。
おかげ座は江戸時代から盛んになったお伊勢参りの様子を
リアルな二分の一模型で立体的に展示して
若くて美しいガイドさんが当時のお伊勢参りの様子をわかりやすく説明してくれる
ちょっとしたタイムトラベル仕立てになっています。
大変勉強になりました。

お伊勢参りの様子を上から見ています。
庶民は旅費を工面するため講を組んだり無尽をつくったりして交代で参拝したそうですね。
後にはお伊勢参りの人には無条件で施しをしなくてはいけないことになったりしたそうです。
他にも代参を頼んだり犬に代参させたりいろいろなことがあったらしいですね。
犬の代参は皆に認知されて「おかげ犬」として大切にされたそうです。
首に提げた路銀が喜捨によって帰路の方が増えていたなんて話もあったそうです。


おかげ犬
昔の犬は賢かったという話です。(←ウソ)


施行
参拝客で潤った伊勢の商店は
参拝客に食べ物を振る舞ったりわらじを提供したりして利益を還元したそうです。
あちこちに「施行」、「せぎゃう」などの幟を立ててサービスをしたそうです。

そういうわけでおかげ座は大変楽しかったです。

列車の時間が迫って参りましたので伊勢市駅に戻りました。
しかしまだお昼を食べてないことに気づいてどこかでお昼をすることにしました。
駅から少し歩いたところにしゃれた喫茶店を見つけたのでそこに入ってみました。
伊勢うどんをやっていると聞いたのでこれをお願いしてお昼にします。
これが正解でして見た目の色の濃さとはうらはらに
マイルドなお味の大変美味しいうどんなのでありました。
今回の旅行は食に恵まれて良い旅行であります。

列車の到着時刻の数分前にホームに流れたアナウンスで
僕たちは列車の到着が遅れることを知らされました。
何度も「今しばらくお待ち下さい」の放送を聞かされたあと
「この列車は運休になりました。近鉄に振り替えになります」と聞かされて
結局近鉄の列車に乗れたのは1時間後でした。


近鉄線で帰路につく

当然名古屋からの乗り継ぎの新幹線には遅れてしまって
せっかく取ってあった指定席はすでに東京に行ってしまいました。
JRの窓口に行きましたが
「今日はどの便も満席で指定振り替えは出来ないんですよ、済みませんね」
と言われて自由席で帰る羽目になりました。
当然ですが自由席も満席で途中駅の名古屋からでは座れるはずもありません。
泣く泣くデッキで立ち席で帰ることになりました。
ま、1時間半ですからいいんですけどね。
後日旅行会社を通じて四千円(二人分)の返金をいただきました。
散々な帰り道でしたがなんだか納得しちゃいました。

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