松山ふたたび



2009年07月27日


松山ふたたび
筆者は2003年8月に四国松山に遊びました。
司馬遼太郎氏の坂の上の雲に刺激されて
松山の街を見たくなったのですね。
きわめて文化度の高い素晴らしい街でありました。

あれから6年小生は再び松山を訪ねます。
今回は家人と二人連れで
小生が前回見たところと見落としたところを回ります。
メモリーが揮発性の小生は再訪しないと忘れちゃうんですね。
松山城とか道後温泉とかもう一度みたいじゃないですか。
それに坂の上の雲ミュージアムとか伊丹十三記念館とか
まえ行ったときはなかった施設もできたそうじゃないですか。
(わかったから勝手に行けよ)

そういうわけで7月の連休に松山に行くことにした小生でしたが
今回は往路に夜出発の寝台列車を選びました。
夜行の寝台列車は以前金沢に行ったときにも利用して
とても楽しかったことを覚えています。
あのときは確か高崎まで水割りを飲みながら夜の車窓を見て過ごして
少し寝たら富山の駅を通過するところで寝台列車の持つワープ感に
感激したのを覚えています。

それで今回も窓の外を流れる人家の明かりを見ながら
酒を飲む旅情を味わいつつ目が覚めたら
目的地に到着みたいなお得感を味わいたくて
夜行寝台列車にしたわけなんですね。

土曜日の夕方家を出て夜の東京駅に向かいます。

夜の東京駅のホームに寝台列車が到着しました。旅情をそそります。
しばらく列車を待ってのち売店でお酒と週刊誌を買い込んで
夜10時発のサンライズ瀬戸に乗り込みます。
目指すB寝台個室は狭かったです。
よく都内にあるカプセルホテルというやつ、あれですね、まさに。
ビールを飲んでのんびり車窓を見るのにはちょっと窮屈だったですね。
飲んだけど。
それでも缶ビールと缶水割りを一つずつあける頃には
ちょうど良い具合に酔いが回ってきて
そのまま気持ちよく寝台車の客らしくなったのでありました。
何しろ京都、大阪を通過したのにも気づかず
目が覚めたらまもなく岡山のところでありまして
坂出で普通の列車に乗り換えなければならない僕たちには
ちょうど良いところで目が覚めた訳なのでありました。

坂出で40分の乗り換え時間を得た僕たちは
駅にあった喫茶店でモーニングセットをいただきました。
美味しいトーストとコーヒーで目を覚まします。
続く列車いしづち5号は
高級感あふれる座席で乗るものを包み込むようです。

いしづち車内。高級感あふれます。
在来線の新幹線のようです。
列車は2時間15分ほどで松山駅に到着しました。

松山駅改札口には警察官が配置されていました。なぜ?
写真の「坂の上の雲」のポスターは松山の街中に貼ってありました。
松山駅について最初に行ったのは
駅の売店の一角にあった観光案内所ですね。

右奥に観光案内所があります。
案内所にはシルバー人材センターから来た感じのおじさんと
接客についての講習を未だ受けたことがない感じの若い女性でした。
「松山の案内図が欲しいのですけれど」と言うと女性はものも言わずに
観光案内を差し込んだスタンドを指さしたのでした。
ありがたく地図を頂いてこれを僕らの旅行案内とします。

僕たちは松山に来てまず最初に行きたかったのは
伊丹十三記念館でありました。
けれどもこの地図には詳しくは載っていませんでした。
そこで観光案内所で伊丹十三記念館のパンフレットをもらって読んでみると
(聞かないとくれないんです)
伊予鉄の松山市駅からバスが出ているようです。
JR松山駅からタクシーで行くと3000円かかるそうですから
まずは松山市駅まで路面電車で移動してバスに乗り換える方が良さそうです。
それでまず最初にこの観光案内所で
路面電車の1Dayチケット400円を購入したのでありました。

松山市名物、路面電車。これが便利なんです。
松山市駅は前来たときに行きましたから大体わかります。
土地勘があるわけですね。

バスで伊丹十三記念館に到着したのは既に11時頃でしたが
記念館はひっそりしていました。
確かに松山市街からも離れてちょっと行きにくいところですからね。
それでも伊丹十三記念館は素晴らしくて
かの人のすごさを改めて感じさせてくれる大変な記念館でした。

伊丹十三記念館中庭。伊丹ファン必見の記念館です。
筆者は学生時代に氏の随筆集「女たちよ!」に
出会って以来のファンですので氏の映画も大好きでした。
ところが記念館の展示類はそんな小生の伊丹理解を遙かに超えて
伊丹氏のデッサン力、デザイン力や
監督業、台本作りの才能の底知れなさを感じさせます。
すごいです。
映画とかエッセイとかもう一度見直してみようかと思うほどです、
たぶん見ないけど。
伊丹氏は天才だったのだと言うことを
改めて感じさせてくれる素晴らしい記念館なのでありました
記念館併設の軽食店で
ケーキとモエエシャンドンを頼んでこれを堪能、すっかり幸せです。
おみやげに「十三まんじゅう」を買いました。
やっぱり幸せです。

記念館からバスで大街道まで戻ります。
路面電車に乗り換えて道後温泉に向かいます。

なんだか懐かしい感じの路面電車車内。乗客の半分は観光客風でした。
路面電車の道後温泉駅は
6年前と変わらぬたたずまいで僕たちを待っていてくれました。

雰囲気のある道後温泉駅駅舎。こんなだけど改札口はないんです。
この道後温泉駅から僕たちの泊まる旅館「宝荘」までは徒歩数分です。
急な坂道を登って目指す旅館に着いたときはもうくたくたでしたが
時間はまだお昼時チェックインには早すぎます。
フロントにお願いして
今夜の宿泊客であることを告げてとりあえず荷物の大部分を預けます。
二人ともショルダーバッグだけの身軽な格好になります。
休む間もなく街に繰り出します。
最初にお昼を食べなくてはもうどうにもなりません。
お腹がすいたんです。

さいわい道後温泉本館前に
美味しいうどんを食べさせるお店を見つけたので
ここでお昼を頂くことにしました。
このうどんが美味しかったです。
とにかくだしがよくきいていて
血圧のことを忘れて汁まで全部飲んでしまいました。
反省。

お昼をすませて一安心した僕たちは路面電車で再び大街道まで出て
松山城に登ることにしました。
僕は6年前にもこの城に登ったので
得意げに大街道からロープウェー乗り場まで家人を案内します。
ところが6年の月日は松山の街を大きく変えてしまったようで
以前見たロープウェー乗り場がなかなか見つかりません。
はなはだ自信をなくしていると
すっかり近代的な建物になったロープウェー乗り場が見つかりました。
凄い変化です。

すっかり新しくなったロープウェー乗り場。

6年前のロープウェー乗り場(参考)。
ただしロープウェーそのものは昔のものでしたね。
乗り場だけ新しくしたのね。
ここのロープウェーは一人乗りのリフトが併走していまして
同じチケットでどちらか好きな方に乗れます。
ロープウェーは思ったよりも短くてあっという間に上の駅に到着します。
その割にそこからお城までの登りがながいです。
乗る方の立場からはコストパフォーマンスに不満の残る駅ですね。
下から登るのは嫌ですから乗りますけどね。

堂々とした松山城天守。
松山城は登るのは二度目ですけど
前来たときのことはきれいさっぱり忘れていて
おかげで見るものすべて目新しくて楽しい登城体験でした。
まるで梯子のような急な階段は楽しかったです。
天守閣のからの風景もまた想像通りの素晴らしいものでした。
(二度目なのに)

お城を後にしてもう一度ロープウェーに乗って街に帰ります。
この後僕たちはロープウェーから
徒歩数分の坂の上の雲ミュージアムに向かいます。
「坂の上の雲」は司馬遼太郎氏の長編で
正岡子規と秋山兄弟に焦点を当てた優れた歴史小説ですね。
今年の秋から坂の上の雲のドラマを
テレビが作るというので松山の街は盛り上がっています。
ミュージアムは超近代的な建物でいささか近代的すぎて
見学者には使いにくい構造でした。
どうして建築家は使いにくい建物を建てたがるのでしょうか。
どうして発注者はこれを良しとしてしまうのでしょうか謎です。
後で聞いたらこの建物は建築家安藤忠雄氏の設計なのだそうですね。
さもありなん。
ともあれ展示物に不満のあるはずもなく
存分に坂の上の雲の世界を楽しみました。

このあとまた路面電車を利用して松山市駅近くの子規堂に向かいます。

こぢんまりとした子規堂。なぜ信楽焼が?
子規堂は子規が17歳まで過ごした住居を
懇意にしていたお寺が残したものなのだそうです。
内部には子規が子供時代使っていた
とっても小さい勉強机などが展示されていて興味深かったです。
貧しくても優秀な人は頭角を現すのだと思いましたですね。
このお寺の境内には坊っちゃん列車や正岡家の墓や
子規の碑などがあってなかなかの見応えです。

時間切れで追い出されるようにして子規堂を辞します。
ここから松山市駅に戻って駅から伸びる大商店街の
銀天街とそれに続く大街道を歩いてみます。
二つのアーケードを通しで歩くとかなり長くて
休日はこの商店街だけで遊べるのではないかと思うほどです。

凄い大きな繁華街です。祝日「海の日」の前日だから国旗が出ているんですね。

大街道の終わりのところに路面電車の大街道の駅がありますので
ここから道後温泉行きに乗ります。
道後温泉駅から道後温泉本館前までは
濃密なおみやげ商店街があります。

道後温泉商店街。お客さんのほとんどは観光客ですね、やっぱ。
商店街は道後温泉本館に至る通路のようなものです。
そのまま映画「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋のような
たたずまいの道後温泉本館の正面に出るわけですね。

やってきました道後温泉本館。いつもお客さんでいっぱいです。
既にくたくたの僕たちは一路宿泊予定の旅館宝荘に向かいます。
旅館は夕食は仲居さんが部屋に食事を運んでくれるタイプの
典型的な日本旅館でした。
ただ道後温泉本館が近くにあるため
入浴のみそちらに行く宿泊客が多いようでした。
そんなめんどくさい。

料理は大変美味しかったです。

翌朝は早めにおきて朝食後に散歩がてら道後温泉本館を見学しました。
さすが朝の道後温泉はすいています。

朝の道後温泉本館。祝日「海の日」なので国旗が掲揚されています。
入浴する気はありませんが何とか中に入って見て回りたいと思っていましたら
皇室専用の「又新殿(ゆうしんでん)」と言う浴場を見学すると
併せて坊ちゃんの間も見学させてもらえると言うじゃないですか。
又そこに行くまでの通路で何となく館内の様子がほの見えるわけです。
これは入らない手はありません。
早速この「又新殿」見学コースを購入して中に入ります。

チケットを買って玄関に入ります。左に下足箱です。驚いたことに大勢の入浴客がいます。


一階廊下。ここを歩いているだけでわくわくします。


二階廊下。すごいです。


坊ちゃんの間。明治のにおいがします。


ほぼ飾りみたいな外廊下。これが案外気持ちがいいのです。
入浴しないでここまで見られれば文句はありません。
大変面白かったです。

道後温泉本館を堪能した後は
一足のばして子規記念博物館に行きました。

前来たときにも蝉が鳴いていた子規記念館。
ここで正岡子規の歩んだ道筋をじっくり勉強できます。
(僕たちは駆け足で)
正岡子規の短い生涯で成し遂げた偉業には驚くばかりです。
しじゅうの、ごじゅうのと重箱のように年を重ねてまったくお前は、
と言う叱責がどこからか聞こえてきそうです。
博物館の帰り道は雨に降られてしまいました。
どうやら二日目の天候は期待できそうもありません。
しばらく部屋で休んでいよいよチェックアウトの時間です。

例の道後温泉のおみやげ商店街でしばらく遊んで駅に向かいました。
この日はそのまま雨がやみませんでしたので
駅でのんびりと帰りの列車を待ったのでした。

ホームに入る「しおかぜ」の雄姿。
帰りはさすがに寝台列車ではなくて
松山からはしおかぜ、
岡山から新幹線のぞみです。
新幹線は快適でしたが最近の新幹線は
ビュッフェや売店などがなくなってしまって
車内販売では落ち着かないし旅の楽しみが減りました。
それでもビールを求めていい気持ちになってまどろみました。
途中、名古屋と新横浜は記憶がありますが、
あとはどこをどう過ぎたやらあいまいです。
こうして昼間の電車で帰ってみるとやっぱり松山は遠いです。

戻る




戻る