京都の歩き方


2011年8月19日-20日

今年の夏は久しぶりに京都に行くことにしました。
京都は新幹線でいつでも行けるところですので
後回しにしていたらもうずいぶんたってしまいました。
まえに行ったのは7年近く以前ですので時のたつのは早いものです。
今回はテレビで見た明治の七宝焼きの名人の
並河靖之氏の作品を二人で見学するツアーです。
さらに永観堂と言うところにある見かえり阿弥陀を見たいわけです。
あと出来たら壬生寺もみたいです。
あと京都大学ってどんなところかな。
あと二条城ってお城だよね。
と言うわけできりがないのでこれらを出来る範囲で回ってくる予定です。

一泊の予定で朝8時東京駅発の新幹線に乗りました。
朝食は車中ですませることにして
東京駅構内の駅弁屋さんなどを巡ります。
しかし朝から揚げ物などは食べたくなくて
結局おにぎり専門店の「ほんのりや」と言う店で
おにぎりを購入いたしました。
ここのおにぎりはおいしいので好きです。
キオスクで発車前にお茶を買ってあとは電車に乗るばかりです。
遠足の朝みたいでわくわくします。
電車に乗ってすぐにおにぎりを食べ始めて
品川を過ぎたあたりで食べ終わってしました。
期待通りのおいしいおにぎりでした。
食べ物がおいしいって単純に幸せなことですよね。
楽しみにしていた朝ご飯を食べ終わってしまって、
これから京都までどうするんだよって感じですが
食事をするために新幹線に乗った訳じゃありませんから大丈夫です。
さっき週刊誌も買っておきました。

ところで僕には新幹線に乗ったからには
是非試したいことがありました。
先日購入したiPad2が新幹線車内で
本当にネットにつながるのかどうかと言うことです。
そのためにわざわざiPad2も持ってきたし
接続に必要なPWも準備してきました。
さいわい乗っている新幹線はN700系ですので
無線LANを積んでいるはずです。
それでも設定にだいぶん手間取りました。
指示通りに操作してもつながらないとき
どこに問題があるのかよくわかりません。
たぶんPWの入力間違いなのでしょうけど
なかなか難しいものですね。
苦労の末やっとつながって
車中でネットが出来ることの快適さを実感しました。
いつでもどこでもネットが出来ると言うことは
本当に快適なことですね。
併せて持ち込んだモバイルルータの方は
とうとうつながりませんでした。
なかなか初期設定が難しくてうまく使いこなせていません。
愛用のモバイルルータは私鉄や地下鉄の駅改札付近で
インターネットにつながります。
他にもいくつかの喫茶店でネット環境を構築できます。
もう少しどこでもつながると嬉しいです。

京都駅には小生的にはまだ朝といえる
午前10時21分に着きました。
すでに朝ご飯をすませてある我々は
まずはホテルによって荷物を預けます。
チェックインは午後ですが宿泊予定者は
荷物だけなら無料で預かってくれるわけですね。
コインロッカーだとお金がかかりますからありがたいサービスです。

このあと僕たちは京都市営の地下鉄烏丸線に乗りました。
やっぱり旅先ではそれぞれの土地の交通機関にも乗りたいですからね。
タクシーより安いからって言えよ。

京都駅から三つ目の駅の烏丸御池で
地下鉄東西線に乗り換えます。
また三つ目の駅の東山で電車を降りて少し歩くと
目指す「並河靖之七宝記念館」があります。

あこがれの並河靖之七宝記念館。
この記念館は並河氏自身の住まい兼工房だったようで
作業場や窯の部屋などが公開されています。
いくつもの並河作品がガラスケースに守られて飾ってあります。
どの作品も素晴らしい作品です。
博物館のボランティアと思しきガイド氏が
熱心に作品の説明をしてくださいます。
聞けば聞くほど見れば見るほど
並河作品の世界は素晴らしいものでした。
小生は今まで七宝のことなど知らない人生でしたが
こういう世界があることを知り得ただけでも
ここに来た甲斐があったというものです。
この後は一キロほど歩くつもりで京都大学に向かいます。

歩き始めてすぐのところで
満足稲荷という興味深い名前の神社を見かけました。

お稲荷さんが満足しちゃったみたいな名前ですね。

名前の通りお稲荷さんのようですが昔秀吉がこの寺に出世祈願して
それがかなったから満足して満足稲荷と名付けたそうです。
日本史上、豊臣秀吉ほど出世した人はいませんので
満足したのも頷けます。
この神社の祭神は倉稲魂(うがのみたま)大神、天照大御神、
猿田彦大神、岩神さま、御神木なのだそうです。
僕はすっかり感心していろいろお願い事をしたのでした。

京都大学は思いのほか遠くて後で調べたら
このあと僕たちは約二キロの道のりを歩きました。
迷いながら自信がないまま歩く二キロは
三キロにも匹敵する疲労につながります。

正門を飾る立て看は正門内側のキャンパス内にはほとんど見かけませんでした。
奥に行くとあるのかも。

京都大学では時計台下のフレンチレストラン
「ラトゥール」で昼食をいただくのが主目的です。
以前東京大学の駒場キャンパスでフレンチレストラン
「ルヴェソンヴェール駒場」で食事をしたことがありまして、
そのときネットで探っていたら
京都大学の「ラトゥール」が関連していることを知ったのです。
で、一度機会があったらこのお店で食べてみたいと思っていたのです。
食事はメインが肉または魚のランチを食べました。
最初にサラダまたは冷たいスープが出てこれがおいしいです。
メインは子牛の肉料理ですが無知な小生には名前は判りません。
ただおいしかったです。
食後に出たシャンパンのシャーベットは絶妙でした。
また食べたいです。

その後記念のペーパーウェイトを購入して
生協を見て京都大学の学生諸君の生活を想像して
満足してキャンパスを辞しました。

次はみかえり阿弥陀で有名な永観堂まで行く予定です。
食事をして元気が出た僕たちでしたが
この後永観堂までの推測約二キロをまた歩く気はしなくて
遂に禁断の(高いから)タクシーに乗ることにしました。
タクシーは乗ってみたかったプリウスでした。
やっぱり音は静かで快適そうでした。

永観堂は浄土宗西山禅林寺派総本山永観堂禅林寺と言います。

永観堂は紅葉の永観堂として知られているそうで
確かに境内は見事な紅葉で満たされていて紅葉の時期にはさぞかし、と思わせる迫力でした。

その奥行きは深く、京都の東を守る山に
張り付くように伽藍が広がっていました。
指定された順路を歩くだけでも高低差が激しくて十分疲れます。
昔高台寺でみた臥龍廊の中を歩かせて貰えるとは思いませんでした。

お寺の中なのに冒険みたいで楽しいです。

最奥部の本堂、阿弥陀堂にある
ご本尊「みかえり阿弥陀」はその昔永観律師に
永観、遅し」と声をかけた阿弥陀様です。
特徴的な振り向いた立ち姿が有名な仏像です。
遅れるものに対する思いやりがあふれている像です。
広々していて起伏の激しい伽藍に翻弄されて
ここでも僕たちはすっかり疲れてしまって
この旅二度目のタクシー乗車となりました。
やはり二キロほど南下して目指すは「清水三年坂美術館」です。

こぢんまりとした清水三年坂美術館。

読んで字のごとく清水寺近くの三年坂にある美術館ですが
ここには午前中鑑賞した「並河靖之」氏の有線七宝に加えて
「濤川惣助」氏の無線七宝も置いてありました。
また彫金の名人「正阿弥勝義」氏の驚異の細工技術も見ることが出来ます。
どの作品も人間技とは思えない芸術品です。
大満足の美術館鑑賞でした。

美術館を出て少し歩きます。
近くに悪縁を断ち切り良縁を結ぶという
魅力的な御利益の安井金比羅宮と言う神社が
あるというので寄ってみることにします。
目指す安井金比羅宮はすぐ近くでした。
ここは崇徳天皇にゆかりがある由緒正しい神社です。

誰だって切りたい悪縁の一つや二つは持っていますよね。

境内にある「縁切り縁結び碑(いし)」の穴をくぐると
悪い縁が切れて良い縁が結ばれるというのです。
穴はかなり小さくてはいはいしなくては通れません。
またお願いする内容を正直にお札に書いて
碑(いし)に貼り付けなくてはいけないのです。

石の周りには願い事を書いたお札が沢山貼り付けてあります。

しかし僕たちは境内の一角に下がる絵馬の迫力に圧倒されて
石をくぐるのを忘れてしまいました。
鈴なりに下げられた絵馬には
それぞれの思いの丈がつづられているのは他の神社と同じですが
そこに書かれているのは強烈な恨みと復讐の文章なのです。
「私をいじめる○○課長が転勤して転勤先でいじめられますように」とか
「彼の浮気相手と彼が生き地獄になりますように」とか
「××株式会社と縁が切れますように」とか
とにかくマイナスオーラが凄いです。
びっくりして早々に退散したのでした。

ところで以前この近くで小川珈琲の店を見たような気がします。
家人に「もう少し歩けば小川珈琲があるはずだから」と
今考えれば全くのでたらめを言って
目の前ににんじんをぶら下げて歩かせていました。
自分もそう思っていたんですから仕方ないですよね、ねっ。
もう少しもう少し探し歩きましたが元々無いものはあるはずもなくて
とうとう小川珈琲は見つかりませんでした。
そのうち東本願寺の御影堂改修中の大きな覆い屋根が見えるに至って
今回の小川珈琲店捜索は打ち切りと言うことになりました。

ところで今回の京都市中での迷走は
正しい地図が手元にないからだと言うことに気づいた僕たちは
駅構内にある観光案内所で
市内の地図を分けてもらうのが良案だと考えました。
駅の中には駅ナビと言う京都市中案内所がありました。
窓口の人にお願いして
「京都まち歩きマップ」という素晴らしい地図をいただきました。
最初からもらえば良かったです。

もうすっかりお腹が空いていたので
駅にある伊勢丹のレストラン街にあがりました。
かつくらと言う店でヒレカツ重、家人はヒレカツ御膳を食べました。
筆者はビールもつけて大変おいしい幸せな夕食の時間です。

ホテルでは冷蔵庫には何も入っていません。
廊下にある自販機のビールを各自買って呑むようになっています。
その方が管理しやすいですからね。
お風呂の後、柿ピーをつまみにビールをあおって今日の復習をします。
さっきもらった地図を見ると小川珈琲を探す場所が間違っていたこと、
本店と三条店を勘違いしていたことなどが判明しました。
これじゃあ見つかるわけがありません。

缶ビール二本飲んでまだ飲み足りなくて
家人に頼んでもう一本買い足して来てもらいました。
夕食時と合わせると四本くらい飲んでいる計算です。
大丈夫なんでしょうか。

おかげでぐっすり寝て翌朝は六時くらいから起きて窓の外を見ていました。

朝の京都駅、八丈口側。新都ホテルから撮影。

窓から見下ろす京都駅はバスとタクシーがひっきりなしに走っています。
ホームには新幹線が次々発着しています。

八時半頃いちど駅まで行って朝食と買い物を済ませることにします。
途中で思いがけず小川珈琲の店「潤JUN」を見つけました。
モーニングセットなどを頼めるようです。
恋しい小川珈琲を見つけたわけですから一も二もなく店に寄り込みます。
吸い込まれたといった方が良いくらいです。
モーニングセットを食べたわけです。
トーストも珈琲もおいしかったです。

そのあと伊勢丹で生八つ橋を少し買いました。
ホテルに戻って荷物をまとめてチェックアウトして
再びクロークに荷物を預けます。
身軽になってもう一度街に飛び出します。
今度はバスで二条城に行くことにします。
さすがに京都は外人観光客が多いです。

二条城内にある門。凄いんですけど、茅葺きなんですよね。
葺き直す技術者がいないんじゃないですか?

二条城では豪壮にして豪華な建築に改めて驚嘆しました。

昔は五層の天守閣もあったのだそうです。

中学の時に修学旅行で来たはずなのに
ほとんどなにも覚えていないことに驚きます。
それは小生が未熟な中学生だったせいかもしれませんが、
そしてもっとずっと多くのものを学んで帰る中学生もいたのかも知れませんが、
きっとほとんどの中学生が何も学ばずに
ただ新京極の華やかさと夜のホテルの部屋での興奮だけを思い出に
帰宅したのではないかと思います。
恥ずかしいことです。

壮麗な二条城を辞して今度は壬生寺に向かって歩きます。
今回は自慢の京都まち歩きマップがありますから
迷う心配はありません。
地図を見ながら途中で興味を引くところがあったら
そこでお昼を食べる計画です。
軽く蕎麦でも食べようかと思って歩いていたわけですが
なかなか思うようなところがありません。
さらに歩くうちにだんだん疲れてきます。
昨日からの歩き疲れはまだ抜けてはいません。
三条会商店街と言うところを抜けると茶色い大きな建物がありました。
地図で調べてみると立命館大学でした。

関関同立で有名な立命館大学。

このような大きな大学には
しばしば外部にも開放している食堂があるものです。
昨日の京都大学みたいに。
それでビルに入って食堂を探してみたわけです。
そうしたらやっぱりあったのです。
案内の掲示に従ってエレベータで上層階のあがります。
食堂はビルのロビーからは想像できない混雑で
お客さんの列も出来ています。
少し待って席についてメインディッシュ以外は
バイキングという形式に戸惑いながら昼食をとりました。
さすが立命館大学、おいしいお昼をいただきました。

食事の後はもう少しだけあるいて壬生寺に向かいます。
小生は約七年前にこの近くを歩いてついでに
壬生寺を見ておこうとして見つからなかったことがあります。
すぐそばの四条大宮駅まで来ていたのに見つからなかったのです。
あのときは地図を持っていなかったので見つけられませんでしたが
今度は自慢の京都まち歩きマップがありますから大丈夫です。

念願かなって壬生寺を見つけて意気揚々と境内に入ります。
壬生寺と言えば新撰組で有名です。

壬生寺は端正な美しい本堂を持っていました。

境内の一角に歴史資料館と言う建物があって
その奥に見学料を取って
新撰組隊士の墓や近藤勇の像などが置いてあります。
新撰組ファンの聖地ですね。

この奥、隊士の墓などを見るのには百円、
地下の壬生寺歴史資料館を見るのには二百円を要します。

壬生寺見学中に雨が降ってきました。
時間的にもそろそろ帰らなくてはいけません。
急いで阪急大宮駅に駆け込みます。
阪急線の電車は焦げ茶色のレトロな感じを出したおしゃれな電車でした。
東京にもああいうのが走れば楽しいのに思うのでした。
烏丸駅で降りてエスカレーターを使ったら、
乗っている人が皆右側に立っています。
京都駅では皆左側にたっていたので
この辺までは左なのかと思っていたら烏丸駅では違うみたいです。
四条駅で地下鉄に乗って京都まで戻ります。
京都駅ではやっぱりみんなエスカレーターは左に立っていました。
京都の人は境目で大変そうです。
いっそのこと法律で決めてしまえばいいのに。

戻ってホテルで荷物を受け取ると
いよいよ帰り道の実感がわきます。
まだ電車まで時間があるのでKOTOCafeと言う喫茶店で
二人で珈琲と抹茶パフェを一つずつ頼んで交互に食べることにします。
これがおいしいのです。
パフェと珈琲の組み合わせが口の中で調和して大変よろしい。

時間が来たので新幹線のホームに向かうことにします。
途中で駅弁を買いました。
ホームのキヨスクには新聞週刊誌お茶ビールお菓子の他に
お土産まで売っています。
考えてみると
観光地でお土産を見て
駅ビルでお土産を見て
改札を通ってからもお土産を見て
さらにホームでもお土産を見るわけですから凄いです。
車内販売だって少しお土産売ってます。

ホームでビールを一つ買います。
この旅行ではよくビールを飲みました。
ホームに入ってくる新幹線を子供達が写真に撮っています。
僕も。

やっぱりいつ見ても格好いい日本の新幹線。

京都駅で待っていると新幹線は3〜5分おきに来ることに気づきます。
驚異の高密度ダイヤ!です。
そんなに走らせなくても良さそうなものですが
それでもどの便もほとんど満席ですので
まだニーズに応えきれてはいないのでしょう。
リニア新幹線作らなくてはだめですね。

弁当を食べてビールを飲んだらすっかり眠くなってしまって
帰路の新幹線はほとんど寝てしまいました。
帰路も念のためiPad2の接続を試しましたが今度はつながりませんでした。
車両はN700でしたのでつながるはずだったんですが
何しろ眠くて接続実験をそれ以上追求する気になれなかったんですね。

そういうわけで久々の京都を思う存分歩き回って
ランナーズハイならぬウォーカーズハイの状態で
日常を離れた二日間を過ごしたのでした。
めでたし、めでたし。
疲れました。

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