谷根千再び




2004年05月30日


谷根千再び
昨年の秋に根津近辺を歩きましたが
谷中千駄木方面は未だ足を踏み入れてないことが気になりまして
一度行って見ることにしました。

当日は朝から雨が降るという天気予報でしたが
予想は全く外れて照りつける太陽の日はまるで真夏のようです。
あまり暑そうなので少したじろぎましたですね。

でも雨が降ると出かける気はしませんし
今回のように日が照りつけると草臥れますし
さりとて曇天は気が滅入るので勘弁して欲しい
というわけでどんな天候でも不満はあるものですね。
雨でなければ良しとしなくてはいけません。

それでお昼少し前に思い切って出かけたのであります。
ちょうどこれから暑くなるという時間帯ですね。

乗換駅の飯田橋で軽く昼食をとり
南北線で東大前駅におりまして少し歩くと日本医大病院であります。
この辺までは昨年の秋歩いたのと同じようなところです。

昨年歩いたときに見かけた行列の出来る鯛焼きやさんの前も通りました。
今回は流石にこの暑さのなか鯛焼きを買う列は出来ていなくて
一人二人焼き上がるのを待つ人がいるのみでした。
今日はすいていて鯛焼きを買うチャンスですが
残念ながら僕たちもこの暑さでは鯛焼きは欲しくありません。

鯛焼き屋さんのある大通りから横道にはいると
芋甚と言う甘味処がありました。
ここは女性客で一杯でした。
この通りは芋甚以外には人影もまばらで
時々初老の夫婦の散歩者とすれ違うだけですが
何故かホコテンになっていました。

                                 ホコテンにする必要はないのでは?
人も車も通らない道路の真ん中を歩くのは
嬉しいような空しいような変な感じでありました。

更に谷中方面に分け入って行くと
坂の途中に猫グッズのお店がありました。
通りかかった人が何人も立ち止まってのぞき込んでいます。
小さな店内から細い道路にあふれ出すように
猫の剥製やぬいぐるみや猫用品が並べてあります。
所々にある本物そっくりの猫の剥製に混じって
本当の本物の猫がお昼寝をしていて
突然あくびをしたりするのでびっくりします。

猫のお店から坂を上りきって左にはいると大名時計博物館があります。
このあたりを歩いていると
僕たちのような散歩者が多いのに驚かされます。
その多くは中年を過ぎ既に初老にさしかかるご年齢の方達です。
流石に杖をつきながらのご老体はお見かけしませんが
平均年齢はかなり高く六十代は当たり前という風にお見かけしました。
引退後もなお健脚と言うことですね。
羨ましいことであります。

                               草深い敷地に埋もれる大名時計博物館
大名時計博物館は陶芸家の上口愚朗氏が蒐集したいわゆる大名時計を
展示したもので江戸時代の
大名達のお抱え時計師達の作った一種の美術品とも言えるものですね。
でもそれだけじゃなくて例の日本特有の(たぶん)不定時制に則して作られた
工夫を凝らした時計だったわけですね。

不定時制というのは
夜明けから日没までと日没から夜明けまでを
六つに区切ってそれぞれを
九つ八つ七つ六つ五つ四つと呼んだことを言うのですね。
つまり夏と冬では一刻の時間の長さが違うわけですね。
江戸時代の日が長いというのは実感だったのですね。

博物館の中はあまり広くはなくて
でも沢山の大名時計が所狭しと並んでいました。
ほとんどの大名時計は櫓のような形をしておりまして
あれが一種の流行だったのでしょうね。
櫓時計にあらざれば大名時計にあらずってかんじですね。
昔の大名はお世辞にも高機能とは言えない
これらの時計を見て悦に入っていたんでしょうね。
昔じゃなくて今の時代に生まれて良かったです。
でも昔の人ももっと昔を想像してそう思っていたかも知れませんね。

大名時計博物館を出て更に北上すると
昔の銭湯を改装したスカイザバスハウスと言う名の
現代美術館があります。
現代美術には興味がありませんが
この建物はむかしテレビドラマの
「時間ですよ」の舞台になっていたところだそうで
その件には興味があります。
お化け番組でしたよね。

そのすぐ近くに「愛玉子」(おーぎょーちー)と言う台湾お菓子のお店、
「岡埜栄泉」と言う和菓子のお店があります。

                               僕は知りませんでした、オーギョーチー

                                       和菓子の老舗、岡埜栄泉
近くに自販機を囲い込んだ休憩所を見つけましたので
自販機でカナダドライジンジャエールを購入、
美味しくいただきました。
更にペットボトルのお茶を一本買ってこれを散歩のともとします。

更に歩くとこのあたりのお寺の多さに驚かされます。
寺また寺の路地を歩いていると
今の時代には珍しい築地塀を見かけました。
昨年暮れに萩に行った際に朽ちて行く築地塀を見ましたが
この谷中の築地塀は流石に朽ちてはいなくて
良く維持管理されていました。

                                              美しい築地塀
これよりさき谷中銀座に向かいます。
途中花へんろと言う喫茶店で一休みしました。
コーヒーとチーズケーキが美味しかったです。
幸せ。
室内は涼しいし
しばらくお店から出る気になれませんでしたね。

チーズケーキで元気が出たのでまた出発です。
まもなく通りかかった「朝倉彫塑館」は
彫塑家の朝倉文夫氏の住居兼アトリエだったところだそうで
現在は「台東区立朝倉彫塑館」と言います。
入場料四百円で気軽に見学が出来ます。
せっかくここまで来たのですから入ってみない手はありませんですね。

                                           朝倉彫塑館入り口
朝倉彫塑館は素晴らしかったです。
猫の塑像や大隈重信像、墓守などの優れた作品は
見るものを圧倒します。
彼の意匠はアトリエのみならず建物全体に散在し
他にも朝倉の生活を偲ばせる書斎や居間、中庭などを見るにつけ
生前の朝倉の偉業を感じ取れます。
朝倉の存在をよく知らなかった小生は
深く自分の不明を恥じたのでありました。
ホント、凄いです。
今回の散歩の一番の収穫でありました。

朝倉彫塑館を出てすぐ谷中銀座が有ります。

                                     日曜日の午後谷中銀座遠景
谷中銀座は典型的な昔からのジモティのための商店街で
その意味では戸越銀座と似た雰囲気の商店街でありました。
どちらの商店街も有名な商店街ですので
その意味では谷中銀座の矜持のようなものが感じられる気がします。

そのごよみせ通りを歩いていたら
珍しいお店を見たので一枚写真を付けます。

                        良くあるラーメン屋さんみたいなクリーニング屋さん
ここまでで随分時間をとってしまって夕方になり鴎外記念図書館は省略
千駄木駅前に到着したのを機に帰路につくことにしました。
千代田線で日比谷まで乗って有楽町線に乗り換えて
一路我が街に向かったのでありました。

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